Tip(チップ)とGratuity(グラテュイティ)について

05.11.2020 | ブログ, 飲食店運営

California Tip Law では「Tip」「Gratuity」に関して、他州と比べ非常に高いレベルで従業員の権利が守られています。※「Tip」と「Gratuity」は同義語という理解で問題ないです。

チップは、レストランのサーバーがサービス提供を行う従業員の給料の一部として支払われるもので、サービス業で働く従業員の最大のモチベーションと言っても過言ではありません。雇用主が正しいチップのルールについてしっかり理解していなければ、従業員のモチベーションを下げかねない、且つ従業員からの訴訟の原因にもなりかねません。この記事では、雇用主が知っておかなければいけない「チップのルール」について説明していきます。

 

【Governing Law(準拠法)】

カリフォルニア州で働く従業員は、「Tip」「Gratuity」の権利について以下2つの法律によって守られています。

Governing Law(準拠法)

①The federal Fair Labor Standards Act

②California’s Labor Code. ( sections 350 through 356)

 

上記の法律で定められている内容以外でも、郡や市のような地方自治体レベルの法律で適応されるものもありますので、詳しくは弁護士に確認してください。

 

【Tip/Gratuity とは】

California Labor Codeでは、チップは「a gratuity is defined as money left for an employee by a customer above the actual amount due for the underlying good or service」と定義されています。つまり、「顧客が受けたサービスを通して得た満足度に対して、そのサービスを提供してくれた『従業員』に対しての謝礼金」という定義になります。この『従業員』に対して支払われるという点が大事なポイントで、「TipやGratuityは従業員に属するものであり、雇用主に属するものではない」という認識が必要です。

 

「Tip」と「Gratuity」 の4つの特徴(定義)

①顧客の「自由意思」で支払われるもの

②顧客が支払うチップの金額は法律により制限されていない(何%でもOK)

③雇用主のポリシーによって、支払われたチップの金額に対して、値上げ等の金額の交渉はできない

④顧客は誰(サービス提供者)にチップを支払いたいかを決める権利がある

 

【Tip とWage (時給) 】

カリフォルニア州法では、「チップ」は雇用主が従業員に支払う「時給」と区別するという定義になっています。ですので、従業員は「時給」とは別に「チップ」を給与として受け取る権利があります。他州では「Tip Credit」と呼ばれる、Cash Wage(Federal $2.13/hour)とチップを合算した形での時給の支払い方法が認められていますがカリフォルニア州では禁止されています。ただし、税法上では「チップ」は「時給」と同じ扱いの課税の対象になります。また、仮に従業員が残業し、オーバータイムが発生した場合の残業代の支払いの計算にはチップは含まれず、時給をベースとして計算されます。

 

TipとService Charge(サービスチャージ)】

「サービスチャージ」はホテルや高級レストランに行った際に、サービスの対価として顧客が支払うものです。 定義としては「チップ」と同じように思いますが、これらの手数料は初めから料金に組み込まれている場合が多いですよね。しかし、「サービスチャージ」と「チップ」は異なるものとして考えられています。サービスチャージは『雇用主に属するものであり、その使い道は雇用主が決めます。雇用主によっては「サービスチャージ」を従業員の「時給」や「残業代」の支払いに充てるケースもあります。サービスチャージとは別に、従業員が顧客からチップを受け取ることはカリフォルニアでは合法です。つまり、従業員の立場からすると、サービスチャージとチップの両方を受け取ることが認められています。これは「Double Tipping」と呼ばれます。

 

【雇用主が知っておくべきチップのルール】

①いつチップは従業員に支払うべき?

基本的には現金で受け取ったチップに関してはその日の内に支払われるべきとされています。ただし、クレジットカードを通してチップの支払いがあった場合は、対象の合計チップ額を次の給与日にまとめて支払うことが多いです。

 

②クレジットカードの手数料は雇用主の負担

カリフォルニア州以外でのいくつかの州では、顧客がクレジットカードでチップを支払いをした際にかかる手数料分を従業員が受け取るチップから控除することが認められていますが、これはカリフォルニア州では違法になります。

 

③「Tipping Pool」は合法

雇用主が全てのチップを集めて(プール)、働いた勤務時間や独自の公平性を期すルールに基づいて決められた割合で対象従業員にチップを支払うことができます。これを「Tipping Pool」と呼びます。Tipping Poolを取り入れるには以下の条件を満たす必要があります。

 

Tipping Poolをする為の条件

①従業員のみがチップを受けとる対象者である。

※レストランの場合、サーバーだけでなく、バッサー、バーテンダー、キッチンスタッフ、皿洗いなどが対象。

②オーナーやマネージャーはチップを受け取ってはいけない。

 

【記録をとりましょう!】

雇用主は誰に、どのように、いくらチップの支払いをしたかの記録をとりましょう前述の通り、従業員にとってチップも時給と同じ課税対象です。これらの記録はCalifornia’s Labor Commissioner's office がインスペクションに来た際に提出を求められます。

 

【罰則について】

もし雇用主が上記のチップのルールを違反した場合、以下の罰則が科されます。

「guilty of a misdemeanor and may be fined up to $1,000, imprisoned for 60 days, or both」

 ※軽犯罪法違反と最高$1,000の罰金、または60日間刑務所に収容される。または両方。

 

【まとめ】

今回は雇用主が知っておかなければならない「チップのルール」について説明しました。日本にはチップの文化が無い為、なかなか理解するのが難しい内容だったかもしれません。しかし、アメリカでレストランをマネジメントする上で絶対に必要な知識となります。

また、正確な情報を提供する様に万全を期しておりますが、情報に誤りや法律内容の変更がある可能性がございます。もし、詳しくチップについて知りたい場合は専門の弁護士にご相談頂くことをお勧めします。何か質問がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。